ハーバード大学によるマッサージの臨床・実証データ

① 筋肉再生を促進するエビデンス(マウス実験)

  • ハーバードWyss研究所と工学部のチームが、機械的刺激(mechanotherapy)として自動装置でマウスの脚筋に圧力をかける実験を実施。この自動装置はマウスの脚を固定する拘束具と、マウスの脚をマッサージするシリコン製のヘッドによって構築されています。
  • その結果、筋肉の損傷後に炎症を引き起こす好中球(neutrophil)が早期に除去され、炎症性サイトカインも減少。マッサージによって炎症物質や余分な免疫細胞が洗い流されたことが判明。
  • 施術を受けた筋肉は、再生速度が約2倍・瘢痕(はんこん)形成が少ないという成果が確認されました。

この研究は、2021年に『Science Translational Medicine』誌に掲載され、メカニカル刺激が免疫応答を介して筋肉再生を強く促すことが科学的に証明されたものです。実際に,“筋肉がより早く・強く回復した”という定量データが得られています。

筋肉の断面図を比較すると、装置によるマッサージを受けていたマウスは、そうでないマウスに比べて、筋線維がより太くなっており、マッサージは筋線維の強度回復にも有効であることが示されました。さらにこの実験データを分析すると、マッサージ中に加えられる力が大きいほど、損傷した筋肉の回復力が高まる傾向がみられることがわかりました。

主な結果とポイント

この研究は、マッサージが単なる感覚的な癒しにとどまらず、筋肉の組織レベルでの修復を生物学的に促進することを示した初めての動物実験の一つです。ただしマウスでのみに限られた結果です。今後、人間による検証が期待される部分です。

効果観察された反応
筋肉の回復スピード向上マッサージを施した筋肉は、回復速度が約2倍に向上
瘢痕(はんこん)組織の減少損傷部位の線維化(硬くなる)を抑制
炎症反応の早期収束好中球(炎症細胞)の除去が加速、筋再生を妨げる炎症が短期で解消
細胞シグナルの活性化YAP(Yes-associated protein)という再生促進の核内タンパク質が活性化された

主な結果とポイント

研究論文掲載

『Science Translational Medicine』(2021.10)

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② 慢性腰痛・首の痛みに対する有効性(人間対象研究)

ハーバード公衆衛生大学院傘下のOsher Centerなどにより、慢性腰痛・首の痛みにおいてマッサージが有意な痛み軽減と機能改善をもたらすと報告されています。

  • 慢性腰痛では、通常ケア(理学療法や自己ケアなど)よりも痛みと日常生活動作の改善効果が高いことが示されました。
  • 慢性首痛に関しては、『Annals of Family Medicine』(2014年)の研究で、60分×週2〜3回×4週間のセラペューティックマッサージが、痛みをより大きく軽減したと示されています。

▶︎ Massage can help back pain sufferers get back on their feet faster 👈

③ 痛みゲート理論による解説と心理的効果

ハーバードヘルス(Harvard Health)による解説では、マッサージが「痛みゲート理論」に沿って痛み信号を遮断し、筋・関節の緊張緩和やストレス・不安の軽減を通じて、睡眠や精神面の改善にも寄与するとされています。

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編集:事務局(一色)

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